20年前と違う現代の防音工事

20年前と違う今の防音工事

この文章を書いている私も音の世界に携わって40年余りが経過しました。コンシュマー対応の防音の仕事をするようになってからも30年余りが経過しました。ピアノの防音工事はなぜ始まったのでしょうか。

1973年ピアノの騒音を理由に母子3人が殺害される事件が発生しました。神奈川県の県営住宅に住んでいた男が階下のピアノの音がうるさいと苦情を訴えました。

しかし階下の家族が何も対策を行わなかったため階下に侵入し子供二人と母親を殺害した事件です。その後、犯人は死刑を求刑され死刑判決が下されました。当時は高度成長で暮らしが豊かになる中でピアノなどの楽器やオーデイオ製品が普及し音の問題が社会現象にもなっていきました。当時「ピアノ公害」という言葉も生まれました。

この事件に影響を受け、住宅都市整備公団は床厚を150mmにすることにしたり、この事件から世の中の騒音に対する考え方が変わっていきました。

この事件のあと楽器の製造メーカが防音工事の必要性を感じ防音工事が出来る会社を探し防音工事会社を楽器演奏者に紹介するシステムが作られました。

楽器製造会社の要請を受け某会社が防音工事のセクションを立ち上げました。その頃より当時防音工事についての検討が始まり防音工事の基礎が出来ていきました。

防音工事の問題点

当時は一般家庭の防音を専門に行う業者は少なく殆どがテレビ局、スタジオなど大型の物件をを行う業者がほとんどでした。

スタジオなどの大型物件に関しては防音、音環境に関する文献などもありましたが個人の楽器練習室、個人スタジオなどは手さぐりで工事を行うような状況でした。発注側も受注側も防音の問題が第一で音の響きなどに関しては完全なノウハウはあまり持っていませんでした。

建材も防音工事で大切な開口部の防音ドアや内付の防音サッシもありませんでした。吸音材も種類がなく選択の余地はありません。

床に使用するフローリングなども今ほど種類がなくカーペットで仕上げ高音の響きが少ない部屋も当時はかなりありました。当時いろいろな物件を担当する中で知識を蓄積していったようです。防音工事は既存の部屋の中に防音の仕様で部屋を作る必要があります。

その為既存のドアを枠に防音ドアの寸法をあわせる必要があり建具屋に特注の防音用の建具を作らせることもありました。その後建材メーカが防音の必要性が増えたため防音建具を製作するようになりました。

初めの頃、防音工事は特殊な工事の為、工事を出来る業者が余りなく数社の業者が工事を受けていました。防音工事が一般的になってくるといろいろな業者が防音業界に参入するようになりました。ほとんど防音の知識が無い業者が参加することによりトラブルも増える事になりました。

現在の防音工事

現在はお施主様の要望に合わせて部屋を作ることが出来ます。

床の仕上げ

床の仕上げ材は非常に重要です。音楽ホールなどは音の響きを考え、フローリングの材料を選択します。カリンやウオールナットなどの硬い材料とナラなどでは響きが変わります。フローリングの貼り方も非常に大切で同じ材料を使用しても貼り方で響きは大きく変わります。

個人邸で防音工事を行う場合でもチエロなどはエンドピンがあり楽器本体の響きが床に伝わります。<ここ写真チエロ>その為床の響きが大切になります。場合によっては床が響きやすいように工事を行う場合があります。

無垢材を使用する場合もありますが最近は突板を貼ったフローリングでも無垢材に匹敵する材料があります。朝日ウッドテックのライブナチュラルなどは歩き心地もよく素晴らしい材料です。

床の響きの違いを体験するには何か小さいラジオなどの音の発生源を置いて試せば音の違いが分かります。

ウオールの仕上げ

昔は吸音する場所以外はクロス工事がほとんどでした。現在では色々な選択をすることが出来ます。

ジョリパット

主に住宅の外装に使用する材料でモルタルの上に塗布します。室内で使用しても独特の味をだすことが出来ます。
表面を凸凹に仕上げることも出来るため高音の拡散にもなります。

ポーターズペイント

オーストラリアで開発された水性ペイントで質感が大変素晴らしい塗装材です。カラーのバリエーションが豊富で好みの色を見つけることが出来ます。オリジナル色の対応も可能です。仕上げの質感も色々あります。石のような風合い、錆び付いた鉄など色々な質感の仕上などもあります。

木質系の仕上げ材

マリタイムパインフランス産のパイン材の表面を丸みのある大きな凸凹をつけた材料です。表面が凸凹になっているために高音を拡散する効果があります。

天井材

マリタイムパイン
通常、床材として使用する材料ですが天井材として使用する場合もあります。表面の凸凹により高音の拡散する効果があります。

吸音材

防音工事発足当初はグラスウールをパネル状に加工した材料が多く使われていました。現在では吸音材の選択範囲は広範囲に広がっています。

ウイスパーウオール

レコーデイングスタジオなどでは昔から使われていましたが最近個人のオーデイオルーム、ホームシアターなどにも使用されるようになっています。仕上げ材の種類が豊富で色々なデザインが可能になります。

ラスク

多孔質の鋳鉄、またはアルミの吸音材です。
アルミラスクはそのままでも内装の意匠として使用することも可能です。<ここ写真7824・7774>材料自体は厚みが10ミリですが空気層なしでも比較的、低音まで吸音することが可能です。

サーモウール

グラスウールの代わりにサーモウールを利用することが最近多くなりました。
サーモウールは羊毛を主体とする材料で有害な化学系接着剤は一切使用されていません。<ここ写真6209>吸音率はグラウウールと比較した場合、数値的には大きな差はありませんが、響きが聴感上ナチュラルな感じがします。

グラビア

石などの骨材を特殊なグルーで現場で固めます。骨材と骨材の間の隙間はそのまま残るので多孔質材料となります。店舗の床に施工して店舗内の騒音を抑えます。

シエード・ハンターダグラス

ハニカムの構造を持つシエードです。ハニカム構造のためハニカムの中に空気層があり吸音構造となっています。ガラス面などに設置することにより、ガラス面からの音の反射を抑えることが出来ます。

アコーステイックミュートパネル

ポリエステルの繊維を5ミリの厚さまで圧縮したパネルで薄型の吸音材です。吸盤による取り付けも可能なのでドア面、ガラス面への取り付けが楽にできます。オプションで特殊印刷加工が可能で文字、イラスト、写真などをプリントすることが可能です。

まとめ

昔の工事は防音工事が主体で遮音することに目的が集中していました。現在の工事は、機器設備、換気設備、照明設備も色々な選択肢があります。部屋のデザインもお施主様の好みに合わせ施工することが可能です。

最初に細かく打合せを行って部屋づくりをすれば一生そこの部屋で楽しむことが可能です。音を楽しむための部屋は、時間の経過と主に音が良くなっていきます。仕上げ材も当初から良い材料を選択すれば経年変化を楽しむことも出来ます。靴なども良い靴を選べば時間の経過と共には着心地が良くなっていきます。

時間をかけて一生楽しめる部屋を作られてはいかがでしょうか。

By | 2018-07-19T04:30:47+00:00 1月 7th, 2018|防音工事ブログ|